あんたの「大変」って何だったのよーー!
(何なのよまったく)
最近、タイミーでスーパーのレジに入るたびに、前の職場にいたある社員を思い出す。
私が勝手に「ボス猿」と呼んでいる人。
長年勤めていたベテラン社員で、とにかく文句が多かった。
「私、大変なのよ〜〜!」
「何でレジがそこまでせなあかんの!」
何かにつけて、自分がいかに大変で、いかに仕事をしているかをアピールする人だった。
電話を取って、それがお客様からのクレームだと分かれば、すぐに私に受話器を渡す。
包装の依頼があれば、店内放送で店長を呼び出す。
理由はいつも「レジから離れられないから」。
トレーの回収を頼まれれば「何でレジがせなあかんの!」。
自分のお気に入りのレジがあって、まるで専用レジのように使い、備品のことでも何かと文句を言う。
シフトについても、ああだこうだ。
とにかく、何かにつけて不満を口にする人だった。
ところが、今タイミーで行っているスーパーでは、社員さんたちが普通にそういう仕事をしている。
クレームにも対応するし、包装もする。
「トレー回収してきま〜す」と、ごく普通に出ていく。
もちろん、タイミーがレジに入っているから動けるという事情もあるだろう。
それでも、誰もいちいち「私、大変なの!」なんて騒いでいない。
そして何より、今の私は4時間ぶっ通しでレジに入っている。
レジメインなら当たり前よね。なのにあのボス猿。
それなのに、小一時間レジに入っただけで「誰も交代に来ない!」と文句を言っていた。
今思えば、何なんだよーー!
こっちはタイミーで4時間ぶっ通しだぞーー!
本当に、黙ってレジしとけ!
しかも、あれだけ自分は仕事ができると豪語していた人。
周りだって、口ばかりで実際はそれほど仕事ができないことに、ある程度気づいていた。
それなのに、誰も何も言えなかった。
そして私も、何も言えなかった。
この人は私より10年ほど職場の先輩で、年齢も上。
しかも田舎の狭い人間関係。
いくら私が役付きでも、肩書きだけで簡単に物が言えるような相手ではなかった。
下手に注意して機嫌を損ねたら、その後がまた面倒くさい。
だから、波風を立てないようにしていた。
本当は腹が立っているのに、表面上は仲良しこよし。
相手の話に合わせ、愛想よく振る舞い、嫌っていることを悟られないようにする。
これがまた、ものすごいストレスだった。
嫌いなら距離を置けばいい。
そんな簡単なことさえできない。いつも、ボス猿の機嫌を気にしながら仕事をしていた。
毎日顔を合わせ、仕事を一緒にしなければならない相手だから。
今になって思う。
私はあの人に支配されていたんじゃないか。
店長という肩書きは私にあった。
責任も私にあった。
なのに、あの人の機嫌を気にして、文句が出ないように気を回し、面倒なことは自分で引き受ける。
何ともおかしな話だ。
周りから見れば、仲良くやっているように見えていたかもしれない。
けれど、その裏でどれほど神経をすり減らしていたことか。
腹が立っても怒れない。
嫌いでも嫌いだと悟られてはいけない。
責任者なのに、自分の思うようにできない。
これほど窮屈なことがあるだろうか。
もちろん、私が仕事を辞めた原因はボス猿だけではない。
突然の店長辞令、増えていく責任、次から次へと降ってくる仕事。
いろんなことが積み重なって、もう限界だった。
それでも、今になって思う。
あんなに文句ばかり言っていた人が正社員として居座っていて、何とかしようと仕事を抱え込んでいた私が、結局は職場を去った。
何とも腹立たしい。
私が辞めた後、ボス猿は異動になったらしい。
きっと異動先でも、あれこれブツブツ言っているんだろうな。もう 甘やかしてくれる相手はいないんだぞ それでも、あいつなら、のさばることだろう。
まあ、今となっては知ったことではないけれど。
こうして別のスーパーで働いてみると、前の職場では当たり前のように受け入れていたことが、実は全然当たり前じゃなかったんだと気づく。
あの人の「大変」は、一体何だったんだろう。
みんなそれぞれ自分の仕事をしている。
それをいちいち大騒ぎして、自分だけが大変だと主張する必要なんてない。
今の私はレジを4時間打って、時間が来たら帰る。
クレームも、売上も、人の管理も、もう私の責任ではない。
それがどれほど気楽なことか。
25年間、いろんなものを背負ってきたけれど、もう誰かの仕事まで背負うのはごめんだ。
そして、もう誰かの機嫌を取りながら働くのもごめんだ。
辞めて半年以上たった今でも、こうして思い出すほどなのだから、あの頃の私は相当我慢していたんだろう。
あの人に言えなかった言葉が、今になって次々と出てくる。
あんたの「私、大変なの〜〜!」って、本当に何だったのよーー!
そして、もうひとつ。
黙ってレジ打っとけや
