辞めて清々した。それなのに。




先日、テレビで若くして高収入を得ている人たちの特集を見た。20代のヤング(笑)で年収600万円ですとーー!すごいなぁ。

それに比べて私は何をやっているんだろう。

57歳。これといった取り柄も趣味も特技もない、ナイナイ星人。唯一の肩書きだった店長も手放し、今はタイミーや短時間のアルバイトで働いている。

働き方をどうするかと悩んでいるけれど、そもそも今の自分にできる仕事がどれほどあるのか。そんなことを考え始めると、また情けなくなってくる。

資格がないわけではない。結婚、出産後に社会復帰しようとした頃、資格を活かせる職場では短時間パートの募集がほとんどなかった。子供も小さかったので、短時間で働ける仕事として選んだのがスーパーだった。

子供たちが大きくなったら、いずれ資格を活かした仕事に戻ろう。

そう思っていたのに、ずるずる、ずるずると25年。後半は正社員として雇用され

今となっては、もう資格職に戻る自信もないし できない。

何とも無駄なことをしてきたのかと思うこともある。

けれど、スーパーで働いた25年間を後悔しているわけではない。

接客も販売も好きだった。自分で売り場を考えて、どう並べたら商品が売れるのか工夫するのが楽しかった。グループ企業内の販売コンクールで上位に入れば、そりゃもう嬉しかった。

現場の仕事には、それなりのやりがいがあった。

だから本当は65歳まで働くつもりだった。

それがある日、突然の店長辞令。

事前の相談もなく、自分の意思を確認されることもなかった。戸惑いながらも、一度は引き受けた。

けれど、仕事も責任も大きく変わり、わずか2か月で退職を決断することになった。

あの2か月は本当に苦しかった。

納得できないことも、腹が立つことも、悔しいこともたくさんあった。会社に対する怒りは相当なものだった。

それでも、一度は引き受けた仕事。

たった2か月で辞めるなんて、結局自分は逃げてしまったんじゃないか。

そんな思いもあった。

25年間積み重ねてきたもの。正社員という安定した立場。毎日通い続けた自分の居場所。

それらを手放すことが、どれほど大きな決断だったか。

辞めたあとも、すぐに気持ちを切り替えられたわけではなかった。仕事のことを思い出しては苦しくなり、生活のリズムを取り戻すにも時間がかかった。

そして今は、ゴルフ場でバッシングをしたり、お風呂掃除をしたり、レジに立ったりしている。

先日、車を運転していたら、以前の職場に出入りしていたメーカーさんの車とすれ違った。向こうは気づいていないだろうけれど、私はすぐにわかった。

その瞬間、ふと思った。

もし以前の職場の人たちが今の私を知ったら、どう思うだろう。

「あの人、店長までしたのに、今はバッシング?お風呂掃除もしてるって」

「落ちぶれたねぇ」「エラそうにしてたのにねーー」「可哀想に」「こんな田舎で仕事ないわよ」

そんなふうに思われるかもしれない。

少し前まで、私自身もそう思われることが恥ずかしかった。

正社員という立場や社会保険などの保障を手放したことにも、もったいなかったかなという思いがあった。

ところで、私の手取りは、ハローワークの方も驚くほどの低賃金だった。

「店長までされて、この手取りですか?」

そんなことを言われるとは思わなかった。

そうなんですよ。

責任だけは次から次へと押し付けられる。あれもこれも店長の責任。何かあれば店長。困ったら店長。

そのくせ、責任の重さと給料がまったく割に合っていない。

やってられるかよ!今ならそう言ってやりたい。

今は短時間の仕事を掛け持ちして、働いた分だけお金をいただく。失業保険の給付もあるとはいえ、店長時代の収入と比べてみると、あれほど無理をして働いていたのは何だったんだろうと思う。

今は仕事が終われば、そこでおしまい。

帰ってからまで仕事のことで頭を悩ませる必要もない。肩書きはないけれど、あの重たい責任もない。

本当に気楽だ。

そして辞めて半年。

ようやく心の底から思えるようになった。

ああ、辞めて清々した!

それなのに、時々また気持ちが沈む。

テレビで活躍する若い人を見れば、自分には何もないような気がする。以前の職場の人を思い出せば、今の自分がどう見られるのか気になる。

そして何より、25年間勤めた会社をあんな形で辞めることになった悔しさが、今も残っている。

今日、あれこれ考えているうちに、ようやく気づいたことがある。

私は、仕事を辞めたかったわけじゃない。あの状況から離れたかったんだ。

本当は、まだ働き続けるつもりだった。

自分が納得できる形で、仕事を終えたかった。辞めたことを後悔しているわけではない。

あんな形で辞めることになったのが悔しかったんだ。

そう考えると、今までずっと胸の奥に引っかかっていたものが、少しだけ見えた気がした。

一方で、今の自分を恥ずかしいと思う必要もない。

ゴルフ場でバッシングをしている自分も、お風呂掃除をしている自分も、ちゃんと働いて自分でお金を稼いでいる。

25年間の経験が消えたわけでもない。

店長という肩書きがなくなったからといって、私自身の価値までなくなったわけじゃない。

落ちぶれたと思いたい人には、思わせておけばいい。

私自身が落ちぶれたと思っていないんだから。

……なんて、ずいぶん強気なことを言っているけれど、きっとまた何かの拍子に落ち込むんだろうな。

浮上したかと思えば、また下降する。

辞めてよかったと思う気持ちも本当。あんな形で辞めたくなかったという気持ちも本当。

今の自由な働き方が好きなのに、昔の安定した立場が惜しくなることもある。

57歳。

なかなか気持ちは落ち着かない。

それでも、こんなふうに揺れながら、少しずつ自分なりの暮らしを見つけている。

今はまだ、これでいいのかなと思っている。

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